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引き継いだ宿で、最初の一年をどう過ごすか

引き継いだ宿で、最初の一年をどう過ごすか

ここまでいくつかのことを書いてきた。
今回で連続ものとしては最終回となります。
お付き合いありがとうございました。

数字の見方。
優先順位の考え方。
予約サイトの整え方。
価格の決め方。
自社予約の増やし方。
発信の続け方。
どれも大切なことだ!
だけどすべてを一度にはできない。
引き継いだ直後の一年は
やることを絞って
ひとつずつ進めていく時間だと思っている。

───

最初の三ヶ月は見る時間だ。
現場を見る。数字を見る。
お客様を見る。スタッフを見る。
自分がどこに立っているのかを確かめる。
この期間は大きく動かないほうがいい。
動きたくなる気持ちはわかる。
けれど見る前に動くと
見えなくなるものがある。
先代がどうやってきたのか。
スタッフが何を大切にしているのか。
お客様が何を求めて来ているのか。
それを知らないまま変えようとすると
壊さなくていいものまで壊してしまう。

───

三ヶ月から六ヶ月は
小さく手を動かす時間だ。
予約サイトの情報を整える。
写真を見直す。
プランの構成を整理する。
すぐにできて影響が見えやすいところから始める。
大きな投資はまだしない。
施設の改修も大規模な採用もこの時期ではない。
まずは今あるものを整えることに集中する。

───

六ヶ月から九ヶ月は価格と向き合う時間だ。
コストを把握して競合を見て価値を考える。
今の価格が適正かどうかを判断する。
上げるべきなら上げる準備をする。
スタッフに背景を共有する。
常連のお客様への伝え方を考える。
この時期に価格を整えておくと
次の繁忙期に向けた準備ができる。

───

九ヶ月から一年は次の一手を考える時間だ。
最初の一年で見えてきたことを整理する。
何がうまくいって何がうまくいかなかったか。
数字はどう変わったか。
お客様の反応はどうだったか。
そのうえで二年目に何をするかを考える。
一年目に土台を整えたからこそ
二年目に大きく動ける。

───

一年というのは長いようで短い。
あっという間に過ぎていく。
だからこそ最初に何をするかを
決めておくことが大切になる。
全部やろうとしない。
優先順位を決めてひとつずつ進めていく。
焦る気持ちはあるだろう。
周りから期待されているかもしれない。
自分自身早く結果を出したいと
思っているかもしれない。
けれど宿の経営は短距離走ではない。
長く続けていくために
最初の一年は土台をつくる時間だと割り切る。
その判断が三年後、
五年後の自分を間違いなく助けることになる。

───

引き継ぐということは
始まりでもあり続きでもある。
先代がつくってきたものを受け取りながら
自分の色を少しずつ加えていく。
すべてを変える必要はない。
すべてを守る必要もない。
何を残して何を変えるか。
その判断を一年かけて見つけていく。

───

この連載では引き継いだ宿で
最初に向き合うことを順を追って書いてきた。
すべてを一度に実践する必要はない。
今の自分に必要なところから
少しずつ取り入れてもらえればと思う。

佐藤弘明
佐藤弘明
常務取締役

旅館支援歴16年|集客・ブランド設計・運営改善まで現場密着伴走|旅館業界のリアルな現場から生まれる気づきや宿の未来を共につくるための視点を日々発信しています。

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