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【第4回】在庫と販路のコントロール

【第4回】在庫と販路のコントロール

前回は価格の決め方について書いた。
原価ベースと需要ベースそれぞれの考え方と限界。
ダイナミックプライシングの是非。
そして価格を決めることは
自分たちの価値を定義することでもある
という話だった。

価格が決まったとして
次に考えるべきは販路の話だ。
同じ部屋をどこで売るか。
OTAに出すのか自社サイトで売るのか。
それぞれにどれだけの在庫を割り当てるのか。
この判断が売上だけでなく
宿の立ち位置そのものに影響する。
レベニューマネジメントというと
価格の話ばかりが注目されがちだが
在庫と販路のコントロールも同じくらい重要だ。
むしろ旅館においては、
こちらのほうが日常的な判断を
迫られる場面が多いかもしれない。

───

まずOTAとの関係を整理しておきたい。
楽天トラベル、じゃらん、一休、
Booking.com、Expedia、Agoda。
主要なOTAだけでも複数ある。
それぞれに特徴があり
集まるお客様の層も違う。
OTAの良いところは集客力だ。
自分たちだけでは届かない層にリーチできる。
特に新規のお客様や遠方のお客様、
インバウンドのお客様は、
OTAを入口にすることが多い。
一方で手数料がかかる。
10%から15%、
高いところでは20%近くになることもある。
25,000円の宿泊で3,000円から5,000円が
手数料として引かれる。
積み重なれば大きな金額だ。
だからといってOTAを使わないという選択は
現実的ではない。
問題はどう使うかだ。

───

OTAに依存しすぎることのリスクがある。
予約の大半がOTA経由になると
手数料の負担が重くなる。
それだけではない。
お客様との関係がOTAを介したものになり
宿への直接的なつながりが薄くなる。
リピーターになっても、次もOTAから予約する。
その構造が固定化してしまう。
自社予約を増やしたいという声は多い。
けれど自社サイトを作っただけでは
予約は入らない。
OTAと同じ価格で出していても
わざわざ自社サイトで予約する理由がない。
自社予約を増やすためには、
そこで予約する意味をつくる必要がある。
少しだけ特典をつける、
自社限定のプランを用意する、
あるいは予約時のやりとりで関係性を築く。
手間はかかるが、
その積み重ねが直接の関係を生む。

───

在庫の配分について考えてみる。
15室の旅館があるとする。
その15室をどの販路にどれだけ割り当てるか。
全部をすべてのOTAに開放するのか。
自社用に何室か確保しておくのか。
かつてはOTAごとに
アロットメントを設定することが多かった。
楽天に5室、じゃらんに5室、自社に5室。
それぞれの枠の中で販売し
売り切れたら終わり。
今はサイトコントローラーの普及で
在庫を一元管理できるようになった。
どこかで予約が入れば
他の販路からも自動で在庫が減る。
ダブルブッキングのリスクが下がり、
販売効率は上がった。
けれど一元管理できることと、
すべてを開放することは違う。
繁忙期にすべての在庫をOTAに開放していると、
あっという間に埋まってしまうことがある。
それ自体は良いことのように見える。
けれど自社から予約しようとした
常連のお客様が
満室で断られるということが起きる。
在庫をどこにどれだけ見せるかは、
誰に泊まってほしいかという意思の表れでもある。

───

クローズ判断という考え方がある。
需要が高い日にあえてOTAへの販売を閉じる。
自社予約や電話予約を優先するために
OTAに在庫を見せない。
あるいは特定のOTAだけを閉じて
手数料の低い販路に誘導する。
これは勇気がいる判断だ。
OTAを閉じればそこからの予約は入らない。
埋まらなかったらどうしようという不安がある。
けれど繁忙期は黙っていても
予約が入る時期だ。
その時期にまでOTAに手数料を払い続けるのか。
自分たちで売る力があるなら、
そこで利益を確保することは理にかなっている。
判断の基準は
その日の需要がどれくらい確実かによる。
確実に埋まる日ならOTAを閉じても問題ない。
微妙な日なら開けておいたほうが安全。
その見極めが経験と感覚で養われていく。

───

早割と直前割の使い分けについても
触れておきたい。
早割は早く予約を確定させたい宿に向いている。
先の予約が見えることで、
仕入れや人員配置の計画が立てやすくなる。
お客様にとっても、
早めに予約するメリットがある。
ただし早割を出しすぎると、
正価で売れるはずだったお客様まで
早割で取ってしまうことがある。
結果として単価が下がる。
直前割は空室を埋めるための手段だ。
このままでは空いてしまうという日に、
価格を下げて集客する。
売れ残るよりはマシという判断だ。
けれど直前割を常態化させると、
ギリギリまで待てば安くなるという期待が
生まれる。
早めに予約していたお客様が
損をしたと感じることもある。
どちらも使い方次第だ。
万能な手段ではなく状況に応じて使い分けるもの。
その判断ができるかどうかが
在庫コントロールの力だと思う。

───

OTAと自社の価格整合という問題がある。
同じ部屋、同じ日、同じ条件なのに、
OTAと自社サイトで価格が違う。
お客様から見れば不信感につながる。
どちらが本当の価格なのかわからない。
基本的には、価格は揃えておくほうが無難だ。
その上で、自社サイトには特典をつける。
ドリンクサービス、レイトチェックアウト、
ちょっとしたお土産。
金額に換算すれば数百円でも、
自社で予約する理由になる。
価格で差をつけるのではなく体験で差をつける。
そのほうが長い目で見て健全な関係が築ける。

───

在庫と販路のコントロールは結局のところ、
自分たちの宿に誰が来てほしいのか
という問いに行き着く。
安く泊まりたい人に来てほしいのか。
価値を理解して選んでくれる人に来てほしいのか。
新規を増やしたいのか。
リピーターを大切にしたいのか。
どれが正解ということではない。
ただその意思がないまま在庫を垂れ流していると、
自分たちでコントロールできない
状態になっていく。

さてあっという間に
次回はこのシリーズの最終回として
数字の先にあるものについて書いてみようと思う。

佐藤弘明
佐藤弘明
常務取締役

旅館支援歴16年|集客・ブランド設計・運営改善まで現場密着伴走|旅館業界のリアルな現場から生まれる気づきや宿の未来を共につくるための視点を日々発信しています。

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