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SCROLL

2026.02.16

【第4回】在庫と販路のコントロール

前回は価格の決め方について書いた。
原価ベースと需要ベースそれぞれの考え方と限界。
ダイナミックプライシングの是非。
そして価格を決めることは
自分たちの価値を定義することでもある
という話だった。

価格が決まったとして
次に考えるべきは販路の話だ。
同じ部屋をどこで売るか。
OTAに出すのか自社サイトで売るのか。
それぞれにどれだけの在庫を割り当てるのか。
この判断が売上だけでなく
宿の立ち位置そのものに影響する。
レベニューマネジメントというと
価格の話ばかりが注目されがちだが
在庫と販路のコントロールも同じくらい重要だ。
むしろ旅館においては、
こちらのほうが日常的な判断を
迫られる場面が多いかもしれない。

───

まずOTAとの関係を整理しておきたい。
楽天トラベル、じゃらん、一休、
Booking.com、Expedia、Agoda。
主要なOTAだけでも複数ある。
それぞれに特徴があり
集まるお客様の層も違う。
OTAの良いところは集客力だ。
自分たちだけでは届かない層にリーチできる。
特に新規のお客様や遠方のお客様、
インバウンドのお客様は、
OTAを入口にすることが多い。
一方で手数料がかかる。
10%から15%、
高いところでは20%近くになることもある。
25,000円の宿泊で3,000円から5,000円が
手数料として引かれる。
積み重なれば大きな金額だ。
だからといってOTAを使わないという選択は
現実的ではない。
問題はどう使うかだ。

───

OTAに依存しすぎることのリスクがある。
予約の大半がOTA経由になると
手数料の負担が重くなる。
それだけではない。
お客様との関係がOTAを介したものになり
宿への直接的なつながりが薄くなる。
リピーターになっても、次もOTAから予約する。
その構造が固定化してしまう。
自社予約を増やしたいという声は多い。
けれど自社サイトを作っただけでは
予約は入らない。
OTAと同じ価格で出していても
わざわざ自社サイトで予約する理由がない。
自社予約を増やすためには、
そこで予約する意味をつくる必要がある。
少しだけ特典をつける、
自社限定のプランを用意する、
あるいは予約時のやりとりで関係性を築く。
手間はかかるが、
その積み重ねが直接の関係を生む。

───

在庫の配分について考えてみる。
15室の旅館があるとする。
その15室をどの販路にどれだけ割り当てるか。
全部をすべてのOTAに開放するのか。
自社用に何室か確保しておくのか。
かつてはOTAごとに
アロットメントを設定することが多かった。
楽天に5室、じゃらんに5室、自社に5室。
それぞれの枠の中で販売し
売り切れたら終わり。
今はサイトコントローラーの普及で
在庫を一元管理できるようになった。
どこかで予約が入れば
他の販路からも自動で在庫が減る。
ダブルブッキングのリスクが下がり、
販売効率は上がった。
けれど一元管理できることと、
すべてを開放することは違う。
繁忙期にすべての在庫をOTAに開放していると、
あっという間に埋まってしまうことがある。
それ自体は良いことのように見える。
けれど自社から予約しようとした
常連のお客様が
満室で断られるということが起きる。
在庫をどこにどれだけ見せるかは、
誰に泊まってほしいかという意思の表れでもある。

───

クローズ判断という考え方がある。
需要が高い日にあえてOTAへの販売を閉じる。
自社予約や電話予約を優先するために
OTAに在庫を見せない。
あるいは特定のOTAだけを閉じて
手数料の低い販路に誘導する。
これは勇気がいる判断だ。
OTAを閉じればそこからの予約は入らない。
埋まらなかったらどうしようという不安がある。
けれど繁忙期は黙っていても
予約が入る時期だ。
その時期にまでOTAに手数料を払い続けるのか。
自分たちで売る力があるなら、
そこで利益を確保することは理にかなっている。
判断の基準は
その日の需要がどれくらい確実かによる。
確実に埋まる日ならOTAを閉じても問題ない。
微妙な日なら開けておいたほうが安全。
その見極めが経験と感覚で養われていく。

───

早割と直前割の使い分けについても
触れておきたい。
早割は早く予約を確定させたい宿に向いている。
先の予約が見えることで、
仕入れや人員配置の計画が立てやすくなる。
お客様にとっても、
早めに予約するメリットがある。
ただし早割を出しすぎると、
正価で売れるはずだったお客様まで
早割で取ってしまうことがある。
結果として単価が下がる。
直前割は空室を埋めるための手段だ。
このままでは空いてしまうという日に、
価格を下げて集客する。
売れ残るよりはマシという判断だ。
けれど直前割を常態化させると、
ギリギリまで待てば安くなるという期待が
生まれる。
早めに予約していたお客様が
損をしたと感じることもある。
どちらも使い方次第だ。
万能な手段ではなく状況に応じて使い分けるもの。
その判断ができるかどうかが
在庫コントロールの力だと思う。

───

OTAと自社の価格整合という問題がある。
同じ部屋、同じ日、同じ条件なのに、
OTAと自社サイトで価格が違う。
お客様から見れば不信感につながる。
どちらが本当の価格なのかわからない。
基本的には、価格は揃えておくほうが無難だ。
その上で、自社サイトには特典をつける。
ドリンクサービス、レイトチェックアウト、
ちょっとしたお土産。
金額に換算すれば数百円でも、
自社で予約する理由になる。
価格で差をつけるのではなく体験で差をつける。
そのほうが長い目で見て健全な関係が築ける。

───

在庫と販路のコントロールは結局のところ、
自分たちの宿に誰が来てほしいのか
という問いに行き着く。
安く泊まりたい人に来てほしいのか。
価値を理解して選んでくれる人に来てほしいのか。
新規を増やしたいのか。
リピーターを大切にしたいのか。
どれが正解ということではない。
ただその意思がないまま在庫を垂れ流していると、
自分たちでコントロールできない
状態になっていく。

さてあっという間に
次回はこのシリーズの最終回として
数字の先にあるものについて書いてみようと思う。

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