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2026.02.09

【第3回】価格をどう決めるか

色々と前提を考え試行錯誤も増え少しずつ
需要を読むことができたとして、
次に来るのは価格の話だ。

いくらで売るか。

この問いに明確な答えを持っている宿は
意外と少ない。
なんとなく去年と同じ周りの宿を見て決めている、原価から逆算している。
理由はさまざまだがどこか曖昧なまま
価格が決まっていることが多い。
価格設定には大きく分けて二つの考え方がある。
原価ベースと需要ベース。
まずはこの違いを整理したい。

───

原価ベースの考え方はわかりやすい。
食材費、人件費、光熱費、アメニティ、リネン。
1泊にかかるコストを積み上げて、
そこに利益を乗せる。
例えば原価が15,000円なら、
20,000円で売れば5,000円の利益が残る。
シンプルな計算だ。
この考え方の良いところは、
赤字を防げることだ。
原価を下回る価格で売らない限り損は出ない。
経営の安全弁として機能する。
けれどこの考え方だけでは足りないことがある。
原価が同じでも、
需要が高い日と低い日がある。
土曜日と火曜日では予約の入り方がまったく違う。にもかかわらず同じ価格で売り続けると
土曜日は安すぎ火曜日は
高すぎるということがおきる。
取れるはずだった売上を取りこぼす。
埋まるはずだった平日が埋まらない。
原価ベースだけで価格を決めると、
そういうことが起きやすい。

───

需要ベースの考え方は市場を見る。
予約がたくさん入る日は高く、
入りにくい日は安く。
需要に応じて価格を変動させることで、
売上の総量を最大化しようとする。
航空券やホテルでは
当たり前になっている考え方だ。

この方法の良いところは
機会損失を減らせることだ。
需要が高い日に安売りして後悔することが減る。
逆に需要が低い日に価格を下げることで、
来なかったかもしれないお客様を呼び込める。
けれどこの考え方にも落とし穴がある。
価格を頻繁に変えすぎると、
お客様からの信頼を損なうことがある。
先週見たときは20,000円だったのに、
今日見たら25,000円になっている。
そういう経験をしたお客様は、
この宿は価格が読めないと感じる。
あるいは安いときを狙って予約しようという
行動につながる。
結果として通常価格で泊まることへの
抵抗感が生まれる。
それは旅館という商売にとっては
あまり良い状態ではない。

───

ダイナミックプライシングという言葉がある。
需要に応じてリアルタイムで
価格を変動させる手法だ。
航空業界では当然のことで、
ホテルでも広く使われている。
専用のシステムが
自動で価格を調整してくれるものもある。
旅館でもこれを導入すべきかという議論がある。
結論から言えば導入の是非は宿による。
客室数が多く稼働率の変動が激しい宿であれば、
効果が出やすい。
システムが自動で調整してくれることで、
人手をかけずに最適化できる。
けれど客室数が少ない旅館では事情が違う。
10室や15室の宿で、
毎日価格が変わることの意味を考えてみてほしい。お客様との距離が近い商売で、
価格がころころ変わることへの違和感。
それを超えるメリットがあるかどうか。
技術的にできることと自分の宿に合うことは、
必ずしも一致しない。
なのでこれはしっかりと戦略的の実行する
必要がある。

───

では旅館はどう価格を決めればいいのか。
ひとつの考え方として、
基準価格を持つということがある。
自分たちが提供している価値に対して、
これが適正だと思える価格。
それを基準として定める。
その上で需要が高い日には少し上げ、
低い日には少し下げる。
振れ幅を決めておくことで大きくぶれない。
たとえば基準価格が25,000円だとする。
繁忙期は30,000円まで上げる。
閑散期は22,000円まで下げる。
この幅の中で調整する。
そう決めておけば判断のたびに迷わなくて済む。
大切なのはなぜその価格なのかを
説明できることだ。
自分に対してもスタッフに対しても、
お客様に対しても。
根拠のある価格は売る側の自信につながる。

───

価格を上げることへの
抵抗感について触れておきたい。
多くの旅館で値上げは怖いという声を聞く。
お客様が離れるのではないか。
口コミで悪く書かれるのではないか。
その不安はわかる。
けれど価格を上げられない本当の理由は、
上げる根拠がないからではないかと
思うことがある。
自分たちの提供している価値を
言葉にできているか。
なぜこの料金なのかを自信を持って伝えられるか。そこが曖昧なままだと値上げは怖い。
根拠がないから反論されたときに返せない。
逆に言えば価値を明確にできれば、
価格は自然についてくる。
値上げではなく適正価格への
修正だと思えるようになる。

───

価格を決めるという行為は
自分たちの価値を定義することでもある。
安くすれば売れる。
それは短期的には正しいかもしれない。
けれど安さで選ばれた関係は、
もっと安い宿が現れたときに終わる。
価格で選ばれるのではなく
価格に納得して選ばれる。
その状態をつくることがレベニューマネジメントの目指すところだと思う。
次回は在庫と販路のコントロールについて書く。
価格が決まったとしてそれをどこでどう売るか。

───

いまの価格に根拠を持てていますか?

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