ADBLOG

Category常務ブログ

【第3回】価格をどう決めるか

【第3回】価格をどう決めるか

色々と前提を考え試行錯誤も増え少しずつ
需要を読むことができたとして、
次に来るのは価格の話だ。

いくらで売るか。

この問いに明確な答えを持っている宿は
意外と少ない。
なんとなく去年と同じ周りの宿を見て決めている、原価から逆算している。
理由はさまざまだがどこか曖昧なまま
価格が決まっていることが多い。
価格設定には大きく分けて二つの考え方がある。
原価ベースと需要ベース。
まずはこの違いを整理したい。

───

原価ベースの考え方はわかりやすい。
食材費、人件費、光熱費、アメニティ、リネン。
1泊にかかるコストを積み上げて、
そこに利益を乗せる。
例えば原価が15,000円なら、
20,000円で売れば5,000円の利益が残る。
シンプルな計算だ。
この考え方の良いところは、
赤字を防げることだ。
原価を下回る価格で売らない限り損は出ない。
経営の安全弁として機能する。
けれどこの考え方だけでは足りないことがある。
原価が同じでも、
需要が高い日と低い日がある。
土曜日と火曜日では予約の入り方がまったく違う。にもかかわらず同じ価格で売り続けると
土曜日は安すぎ火曜日は
高すぎるということがおきる。
取れるはずだった売上を取りこぼす。
埋まるはずだった平日が埋まらない。
原価ベースだけで価格を決めると、
そういうことが起きやすい。

───

需要ベースの考え方は市場を見る。
予約がたくさん入る日は高く、
入りにくい日は安く。
需要に応じて価格を変動させることで、
売上の総量を最大化しようとする。
航空券やホテルでは
当たり前になっている考え方だ。

この方法の良いところは
機会損失を減らせることだ。
需要が高い日に安売りして後悔することが減る。
逆に需要が低い日に価格を下げることで、
来なかったかもしれないお客様を呼び込める。
けれどこの考え方にも落とし穴がある。
価格を頻繁に変えすぎると、
お客様からの信頼を損なうことがある。
先週見たときは20,000円だったのに、
今日見たら25,000円になっている。
そういう経験をしたお客様は、
この宿は価格が読めないと感じる。
あるいは安いときを狙って予約しようという
行動につながる。
結果として通常価格で泊まることへの
抵抗感が生まれる。
それは旅館という商売にとっては
あまり良い状態ではない。

───

ダイナミックプライシングという言葉がある。
需要に応じてリアルタイムで
価格を変動させる手法だ。
航空業界では当然のことで、
ホテルでも広く使われている。
専用のシステムが
自動で価格を調整してくれるものもある。
旅館でもこれを導入すべきかという議論がある。
結論から言えば導入の是非は宿による。
客室数が多く稼働率の変動が激しい宿であれば、
効果が出やすい。
システムが自動で調整してくれることで、
人手をかけずに最適化できる。
けれど客室数が少ない旅館では事情が違う。
10室や15室の宿で、
毎日価格が変わることの意味を考えてみてほしい。お客様との距離が近い商売で、
価格がころころ変わることへの違和感。
それを超えるメリットがあるかどうか。
技術的にできることと自分の宿に合うことは、
必ずしも一致しない。
なのでこれはしっかりと戦略的の実行する
必要がある。

───

では旅館はどう価格を決めればいいのか。
ひとつの考え方として、
基準価格を持つということがある。
自分たちが提供している価値に対して、
これが適正だと思える価格。
それを基準として定める。
その上で需要が高い日には少し上げ、
低い日には少し下げる。
振れ幅を決めておくことで大きくぶれない。
たとえば基準価格が25,000円だとする。
繁忙期は30,000円まで上げる。
閑散期は22,000円まで下げる。
この幅の中で調整する。
そう決めておけば判断のたびに迷わなくて済む。
大切なのはなぜその価格なのかを
説明できることだ。
自分に対してもスタッフに対しても、
お客様に対しても。
根拠のある価格は売る側の自信につながる。

───

価格を上げることへの
抵抗感について触れておきたい。
多くの旅館で値上げは怖いという声を聞く。
お客様が離れるのではないか。
口コミで悪く書かれるのではないか。
その不安はわかる。
けれど価格を上げられない本当の理由は、
上げる根拠がないからではないかと
思うことがある。
自分たちの提供している価値を
言葉にできているか。
なぜこの料金なのかを自信を持って伝えられるか。そこが曖昧なままだと値上げは怖い。
根拠がないから反論されたときに返せない。
逆に言えば価値を明確にできれば、
価格は自然についてくる。
値上げではなく適正価格への
修正だと思えるようになる。

───

価格を決めるという行為は
自分たちの価値を定義することでもある。
安くすれば売れる。
それは短期的には正しいかもしれない。
けれど安さで選ばれた関係は、
もっと安い宿が現れたときに終わる。
価格で選ばれるのではなく
価格に納得して選ばれる。
その状態をつくることがレベニューマネジメントの目指すところだと思う。
次回は在庫と販路のコントロールについて書く。
価格が決まったとしてそれをどこでどう売るか。

───

いまの価格に根拠を持てていますか?

佐藤弘明
佐藤弘明
常務取締役

旅館支援歴16年|集客・ブランド設計・運営改善まで現場密着伴走|旅館業界のリアルな現場から生まれる気づきや宿の未来を共につくるための視点を日々発信しています。

ページ上部へ戻る