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旅館の数字どこから見ればいいのか?

旅館の数字どこから見ればいいのか?

販売分析という言葉を聞くと、
少し身構える人がいるかもしれない。
数字が得意ではない。
エクセルを開くのが億劫。
何を見ればいいかわからないまま
気づけば後回しになっている。

でも分析というのは本来そんなに
大げさなものではないと思っている。
今どうなっているかを見るそれだけのこと。
旅館の販売を見直したいと思ったとき、
最初にぶつかるのは
何から手をつければいいのかという壁だと思う。
売上を上げたい。
稼働を伸ばしたい。
単価を見直したい。
そう思って数字を眺めてみても
どこを見ればいいのか、
何を比べればいいのか、
判断の順番がわからない。
この記事では販売分析を
これから始める人に向けて見る順番と
確認すべきポイントを一つずつ整理していく。
特別なツールがなくても手元にあるデータで
始められる形にした。
読み終わったときに今の状態が見えたという
感覚があれば少しでもあれば十分だと思っている。
見えれば次に何をすべきかは、
たぶん自然と浮かんでくる。

───

⚪︎まず何を揃えればいいのか?

数字を見る前に、
まず何があるかを確認するところから。
販売分析に使うデータは、
大きく分けて3つある。

1つ目は宿泊実績。

いつ、誰が、どのプランでいくらで泊まったか。
これがすべての起点になる。
PMSと呼ばれる宿泊管理システムを
使っていればそこから出力できることが多い。
手書きの予約台帳でも項目が揃っていれば
問題ない。

2つ目は予約経路ごとの内訳。

じゃらん、楽天、一休、自社サイトなど、
どこから予約が入っているか。
サイトコントローラーを使っていれば
一覧で見られる。
なければ予約台帳を経路別に
数えるところから始める。

3つ目は客室ごとの稼働状況。

どの部屋がどれくらい埋まっているか。
満室の日と空室の日の差はどれくらいか。
これも宿泊実績から拾える。
最初から完璧なデータが揃っている必要はない。
直近3ヶ月分を目安にあるものを集めてみる。
足りない部分は分析を進めながら次から取っておこうと決めればいい。

ここでのチェックポイント
□ 宿泊実績データは手元にあるか
(日付・人数・金額・プラン名)
□ 予約経路ごとの件数がわかるか
□ 客室ごとの稼働がわかるか
□ 直近3ヶ月分のデータは揃っているか

───

⚪︎最初にどこを見るか?

データが手元に来たら最初に見るのは全体像だ。
いきなり細かい内訳に入らず
宿全体として今どういう状態なのかを掴む。
見る数字は3つだけ。

1つ目は月ごとの売上合計。

直近3ヶ月の売上を並べて増えているのか、
減っているのか、横ばいなのかを見る。
この時点で「良い・悪い」を判断しなくていい。
動きを見るだけ。

2つ目は月ごとの稼働率。

稼働率とは販売可能な部屋数のうち、
実際に泊まりがあった割合のこと。
計算式は「販売室数 ÷ 販売可能室数 × 100」。

3つ目は客室単価。
※ADRと呼ばれることもある。

売上を販売室数で割ったもので、
1室あたり平均でいくらで売れているかがわかる。
計算式は「売上 ÷ 販売室数」。
この3つを並べると輪郭が見えてくる。

売上が下がっているとしてそれは稼働が落ちているからなのか単価が下がっているからなのか。
稼働は高いのに売上が伸びていないなら、
単価のほうに何かあるのかもしれない。
単価は悪くないのに売上が足りないなら、
稼働に余地があるのかもしれない。
原因を特定するというより次にどこを見ればいいかのあたりをつける段階だと思っている。

ここでのチェックポイント
□ 直近3ヶ月の売上を並べたか
□ 稼働率を計算したか
□ 客室単価を計算したか
□ 売上の動きが「稼働」と「単価」のどちらに関係していそうか、
なんとなく見えたか

───

⚪︎予約はどこから来ているか?

全体像が見えたら次はどこから
予約が来ているかを見る。
宿の売上はどこかの経路を通じて入ってくる。
じゃらん、楽天トラベル、一休、Booking.com、
自社サイト、電話予約など。
この内訳を見ることで
今の販売がどこに乗っているかがわかる。
見る数字は2つ。

1つ目は経路ごとの予約件数。

単純に「どこからの予約が多いか」を数える。

2つ目は経路ごとの売上構成比。

売上全体に対して各経路が何%を占めているか。
この2つを並べると、
少し見え方が変わることがある。
件数は多いのに売上構成比が低い経路は、
単価が低いのかもしれない。
件数は少ないのに売上構成比が高い経路は、
高単価の予約が入っている。
特定の経路に偏りすぎていると
その経路の変動に引っ張られやすくなる。
どこが主力でどこに余地があるのか。
その感覚を持っておくと後で
戦略を考えるときに使える。

ここでのチェックポイント
□ 経路ごとの予約件数を出したか
□ 経路ごとの売上構成比を出したか
□ 件数と売上構成比に差がある経路はないか
□ 特定の経路に売上が偏りすぎていないか

───

⚪︎どの部屋が売れているか?

次に見るのは客室ごとの動き。
宿には複数の客室タイプがあることが多い。
和室、洋室、特別室、露天風呂付きなど。
全部が同じように売れているとは限らない。

見る数字は2つ。

1つ目は客室タイプごとの稼働率。

タイプ別に「どれくらい埋まっているか」を出す。

2つ目は客室タイプごとの平均単価。

タイプ別にいくらで売れているかを出す。
この2つを並べると部屋ごとの
役割のようなものが見えてくる。
稼働も単価も高い部屋は今の主力。
稼働は高いが単価が低い部屋は値付けを
見直す余地があるかもしれない。
稼働が低く単価は高い部屋は、
見せ方や売り方のほうに何かあるのかもしれない。
すべての部屋を同じように売る必要はない。
どの部屋で稼ぎどの部屋で補うか。
その役割分担が見えてくると考え方が少し変わる。

ここでのチェックポイント
□ 客室タイプごとの稼働率を出したか
□ 客室タイプごとの平均単価を出したか
□ 部屋ごとの「売れ方の違い」が見えたか
□ 主力の部屋と改善余地がありそうな部屋がなんとなく分かれたか

───

⚪︎価格と時期はどう関係しているか?

最後に見るのは価格と時期の関係。
宿の価格は日によって変わる。
平日と週末、
繁忙期と閑散期、
連休と通常期。
同じ部屋でもいつ売るかで単価は変わる。
見る数字は2つ。

1つ目は曜日ごとの平均単価。

月曜から日曜まで、曜日別に単価を出す。

2つ目は月ごとの平均単価。

月別に並べて繁忙期と閑散期の差を見る。
この2つを重ねると
価格の張りのようなものが見えてくる。
繁忙期に単価が上がっていなければ、
取りこぼしがあるのかもしれない。
閑散期に単価を下げすぎていれば、
必要以上に利益を削っているかもしれない。
週末と平日の差が小さすぎれば、
需要に合った価格になっていないのかもしれない。
高く売れるときに高く売れているか?
安く売らなくていいときに安く売っていないか?
その視点で眺めると、
調整の余地が見えてくることがある。

ここでのチェックポイント
□ 曜日ごとの平均単価を出したか
□ 月ごとの平均単価を並べたか
□ 繁忙期に単価が上がっているか
□ 閑散期の単価が下がりすぎていないか
□ 週末と平日の価格差は適切か

───

⚪︎分析の後に何を考えるか?

ここまででいくつかのことが見えているはず。
売上が稼働と単価のどちらに引っ張られているか。
予約経路のバランスと偏りの有無。
客室ごとの売れ方の違い。
価格設定の張り具合。
これらが見えたら次にやることが絞られてくる。
稼働に課題があるなら露出を増やすのか
売り方を変えるのか。
単価に課題があるなら価格設定を見直すのか、
高単価の部屋やプランを強化するのか。
経路に偏りがあるなら別の経路を育てるのか、
自社予約を伸ばすのか。
特定の部屋が弱いならその部屋の
見せ方やプランを変えるのか。
全部を一度に直そうとしなくていい。
まず一つ一番効きそうなところから手をつける。
それが次の分析にも繋がっていく。

最後のチェックポイント
□ 売上の課題は「稼働」と「単価」のどちらか
□ 予約経路の偏りや改善余地が見えたか
□ 客室ごとの売れ方の違いが見えたか
□ 価格設定に調整の余地があるか
□ 次に手をつけるところが一つ決まったか

数字を見ることは、
答えを出すことではないと思っている。
どちらかというと問いを立てることに近い。
「なぜこの部屋だけ稼働が低いのか」
「なぜこの経路の単価が低いのか」
「なぜ繁忙期に売上が伸びきらないのか」
その問いが立てば次に見るべきものが見えてくる。
見えてくれば打ち手が絞られていく。
まずは手元のデータを開いて、
全体を眺めるところから。
見える景色が少しずつ変わっていくと
いいなと思う。

佐藤弘明
佐藤弘明
常務取締役

旅館支援歴16年|集客・ブランド設計・運営改善まで現場密着伴走|旅館業界のリアルな現場から生まれる気づきや宿の未来を共につくるための視点を日々発信しています。

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