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2026.01.27

【第1回】なぜ今旅館にレベニューマネジメントなのか?

レベニューマネジメントという言葉が、
旅館の現場でも聞かれるようになって久しい。
もともとは航空業界から生まれた考え方で、
ホテル業界では早くから取り入れられてきた。
需要を予測し価格と在庫を動かすことで売上を最大化する。
その手法は洗練され今では専用のシステムやコンサルティングも
数多く存在するほどだ。
けれど旅館の現場にいると、
この言葉がどこか遠くに感じられることがある。

───

ホテルと旅館では商売の成り立ちが違うということは意識する必要がある。
ホテルは基本的に部屋を売っている。
素泊まりが標準で、
食事は別でサービスも別。
だから1室あたりの売上を軸に考えやすい。
価格を上げ下げしても提供するものの形が大きく変わるわけではない。
一方で旅館は滞在価値を売っている。
部屋、食事、温泉、接客、空間。
それらが一体となってひとつの体験を構成している。
いわば総合力が旅館の魅力とも言える。
料金を動かすということはその体験の価値をどう見せるかという
問いに直結する。
だからホテルのレベニューマネジメントをそのまま持ち込んでも、
どこかしっくりこない。
数字の動かし方は参考になっても、
根っこにある考え方が噛み合わないことがある。

───

それでも今旅館がこの概念と向き合う必要があるのはなぜか。
ひとつは、OTAの存在だ。
かつて旅館の予約は電話か旅行代理店(リアルエージェント)が主だった。価格は年間を通じてほぼ固定で、
繁忙期に少し上がる程度でそれでも商売は成り立っていた。
けれど今は違う。
OTAを通じて同じ地域の宿が横並びで比較される。
価格、口コミ、写真、すべてが並ぶ。
お客様は瞬時に比較し選ぶことが可能である。
その環境の中で価格をどう設定するかは、
以前よりもずっと経営に直結するようになった。

そしてもうひとつは近年のコスト増の問題だ。

総合力勝負の旅館ではすべての原価が直結的に利益に影響する。
人件費、食材費、光熱費。
どれも上がり続けている。
にもかかわらず価格を上げることへの抵抗感は根強い。
据え置きのまま耐えている宿も本当に少なくない。
けれどそれではいずれ体力が尽きる。

価格を上げるにしても下げるにしても、
何を根拠にするのか。
その判断の軸を持つためにレベニューマネジメントの
考え方が必要になってきている。

───

ただしここで誤解してほしくないことがある。

レベニューマネジメントは、
売上を単に最大化するための技術ではない。
少なくとも旅館においてはそうではないと思っている。

売上を最大化しようとすれば需要が高いときに価格を上げ
低いときに下げる。
それを繰り返せば数字は上がるかもしれない。
けれどその先に何が残るのか。
価格が日々変わる宿。
安いときだけ来るお客様。
値段で選ばれ値段で離れていく関係。
それは本当に旅館が目指す姿なのか。

レベニューマネジメントの本質自体は売上の最大化ではなく、
価値の適正化だと考えている。
自分たちが提供しているものの価値を正しく理解し、
それに見合った価格をつける。
その判断をするための考え方と手法。
それがレベニューマネジメントだと思う。

───

このシリーズでは旅館の視点からレベニューマネジメントを考えていく。

ホテルの手法をそのまま紹介するのではなく、
旅館の商売に合う形で、何をどう見ればいいのかを整理したい。

次回は需要を読むということについて書いてみたい。
曜日、季節、イベント。
数字の奥にある流れをどう捉えるか。

いまの時代どう価格を決めていくか?
次回以降考えていきたい。

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