【若旦那・若女将へ】宿を引き継ぐあなたが最初に向き合うこと

宿を引き継ぐことが決まったとき何から手を付ければいいのか?
その問いを現場で何度も聞いてきた。
二代目になる人あるいはこれから家業に入る人が最初にぶつかるのは、
売上でも、
人手でも、
施設の老朽化でもないことが多い。
むしろ何がわからないのかがわからない。
そこに立ちすくんでいる姿を何度も見てきた。
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親や先代のやり方がある。
長年勤めてきたスタッフがいる。
帳簿の見方も、
予約サイトの使い方も、
まだ十分に飲み込めていない。
けれど宿は毎日動いている。
止まってはくれない。
このギャップが引き継ぎの初期に最も負荷をかけてくる。
現場は平常運転で回り続けているのに、
自分だけが浮いている感覚。
それは努力不足ではなくそもそもの構造の問題だ。
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最初にやるべきことは、
売上を伸ばすことでも人を採ることでもない。
宿を自分の言葉で言えるようになること。
これがすべての土台になる。
たとえばこういう問いを自分に向けてみる。
① この宿は、誰に来てほしい宿なのか
② なぜその人たちがここを選ぶのか
③ その理由は他の宿と比べたときに伝わっているか?
正解を出すことが目的ではない。
問いに対して自分なりの仮説を持てるかどうか。
そこから経営は始まる。
ここを自分なりに語れないことや想いはあるけど
言語化出来ないことこれが最初のハードルになってくる。
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売上を見るにしても、
施設を見るにしても、
スタッフと話すにしてもここがないと判断ができない。
何を残して何を変えるか。
どこに時間と費用をかけるか。
その選択の軸になるのが自分なりの仮説だ。
引き継いだ宿を一度外側から眺めてみること。
自分がお客様だったらどう見えるか。
予約サイトで他の宿と並んだときに何が伝わっているか。
その視点を持つだけで、見えてくる世界は変わってくる。
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もうひとつ早い段階で触れておきたいのは数字の流れを把握すること。
売上だけではなく何がどのくらい残っているのか。
どこにコストがかかっていて何が重たいのか。
数字を見ると現実が見える。
そして何に手を付ければ影響が大きいかもわかる。
とはいえ最初から完璧に読める必要はない。
毎月の売上と経費、
客室稼働率、
予約経路別の構成比。
この三つを追いかけるだけでも景色は変わってくる。
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引き継ぎの直後は動きたくなる。
変えたくなる。
けれど最初の90日は見る時間だと思ったほうがいい。
現場を見る。
数字を見る。
お客様を見る。
そして先代や古参のスタッフが見てきたものに耳を傾ける。
その時間を経てはじめて次の一手が見えてくる。
逆に言えば見る前に動くと見えなくなるものがある。
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引き継ぎとはスタートラインに立つまでの準備だと思っている。
売上を伸ばすことも、
施設を直すこともその先にこそある。
まずは自分がどこに立っているのかを確かめること。
何を背負っていて何がまだ見えていないのかを知ること。
焦らなくていい。
その時間はあとから必ず効いてくる。
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次回は二代目が最初に数字を見るとき、
どこから見ればいいのかについて書いてみたい。
いま自分の宿を見ていて一番ズレていると
感じるのはどこですか?
