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無名という壁の正体

無名という壁の正体

OTAの手数料を下げたいという相談は絶えない。
気持ちはよく分かる。
売上の10%、20%が持っていかれる。
それが毎月、
毎予約ごとに積み重なっていく。

削れるなら削りたい。
当然の感覚だと思う。

ただ手数料の話をしているうちは、
たぶんまだ構造の中にいる。

───

宿泊業界にはある種の流れがある。
OTAは新規の窓口。
まずそこで知ってもらい泊まってもらう。
そこから自社サイトへの誘導を図り、
次回はダイレクトに予約してもらう。
いわゆるリピーター獲得の導線。

これは効率的だし現実的でもある。
多くの施設がこの流れを前提に動いている。
でもふと思うことがある。
この流れの外側に出ることはできないのだろうか。

───

指名買いという言葉がある。
比較されない。
検索されない。
最初からその宿を目指して予約が入る。
OTAのランキングや価格競争とは無縁の場所。
手数料の問題も、
比較サイトでの見え方も、
そもそも関係がなくなる地点。
これが理想だと言うと
夢物語に聞こえるかもしれない。

でも実際にそういう状態にある宿は存在する。
決して数は多くないが確かにある。
ではそこに至る道はどこにあるのか。

───

その問いの手前に無名という壁がある。
無名だからOTAに頼る。
OTAに頼るから比較される。
比較されるから価格で戦う。
価格で戦うから利益が残らない。
利益が残らないから発信に手が回らない。
発信できないから無名のまま。

この循環の中にいる限り指名買いには届かない。
では、無名とは何か?

───

発信していない宿は実は少ない。
SNSを開設している。
ブログを書いている。
OTAも整えている。
写真も撮っている。
やることはやっている。
それでも届かない。
知られない。
選ばれない。
なぜか?
たぶん誰かに語っているようで、
誰にも語れていないからだ。

───

結局のところ万人に向けた言葉は
誰にも刺さらない。

自然豊かな立地、心のこもったおもてなし、
旬の食材を使った料理。
どれも本当のことだろう。
でもそれは隣の宿も言っている。
その隣も。またその隣も。
言葉が届かないのは声が小さいからではない。
あなたに言っているという近さがないからだ。
これが無名という壁の正体だと思う。
誰かにとっての有名は誰かにとっては無名である。

───

ではその壁を前にして何ができるのか?

いくつか小さな手がかりを置いておきたい。
ひとつは誰に届けたいかを絞ること。
万人に届く必要はない。
むしろ万人に向けた言葉は誰にも届かない。
10室以下の宿なら、
年間で泊まれる人数には限りがある。
その枠に入りたいと思う人だけに届けばいい。
もうひとつはOTAの中で終わらせないこと。

予約が入ったあと、
チェックアウトのあとその人とどう繋がるか?
次の接点をどこに置くか。
自社サイトへの誘導はその一歩にすぎない。
そしてたぶん一番大事なのは、
何を言うかより何を言わないかを決めること。
全部を説明しようとすると伝わらない。

削ることで残るものがある。

その宿にしかない空気を言葉にしすぎないまま
伝える方法を探ることも必要だと思う。

───

無名であることは弱さではない。

まだ届いていないだけだ。
届け方がまだ見つかっていないだけだ。
その手がかりはたぶん外側ではなく、
すでに宿の中にあなたの中にある。

それを恐れずまずは目の前の
1人を大切にするように届けて欲しい。

佐藤弘明
佐藤弘明
常務取締役

旅館支援歴16年|集客・ブランド設計・運営改善まで現場密着伴走|旅館業界のリアルな現場から生まれる気づきや宿の未来を共につくるための視点を日々発信しています。

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