富裕層とは誰のことなのか宿泊業界で使われ続ける言葉について考えてみる

年明けにある記事を読んだ。
一億円を超えるロールスロイスの限定車が、
日本のユーザーによって購入されたという
内容だった。

この記事に反応したのは色々あるが
弊社の別事業でも車を取り扱っている側面もあり
注目の視線はまた違った側面もあった。
余談だが実際に読み物としても面白いので
興味がある方は一度見てほしいと思う。

話をロールスロイスの記事に戻すと、
金額の大きさも世界限定という
希少性も確かに目を引くのだけれど
読み進めるうちに別のことが気になり始めた。
この記事の中では、
富裕層という言葉はほとんど使われていない。
それでも多くの人が、
これは富裕層の話だと自然に受け取る。
ネットのコメントやSNSでも自分のことではないが誰が買ったのかやこの車があーでもないこーでもないと話したり好き好き対応は違えど購入出来るという人や企業となるとやはり富裕層という
イメージが頭をよぎるのはもっともだと思う。
話は行ったり来たりするのだが
私たちがいる宿泊業界でも、
ここ数年で富裕層という言葉を
耳にする機会が一気に増えた。
・富裕層向けプラン
・富裕層インバウンド
・富裕層を狙う
だがその一方でふと立ち止まりたくなる。
私たちが言っている富裕層とは、
いったい誰のことなのだろうか?
───
金額が高いことは富裕層の条件なのか
ロールスロイスの記事を読んで強く感じたのは
価格そのものよりも姿勢の話だった。
この車は一億円を超える。
だが記事の中で繰り返し語られているのは、
値段ではない。
オーダーメードであることや
長い時間をかけて作られていること
所有者の好みに合わせて設計されていること
価格は結果であって主役ではないのだ。
宿泊業界では富裕層向けという言葉が
いつの間にか高単価と同義で
使われている場面が多い。
一泊十万円以上
特別会席
限定客室
もちろんそれらは一つの要素ではある。
だが金額だけで線を引いた瞬間に
話は少し雑になる。
───
富裕層は属性ではなく関係性の話ということ。
ロールスロイスの限定モデルが
手に入るのはお金を持っている人すべてではない。
ブランドとの付き合い
過去の購入履歴
信頼関係
そうした積み重ねの先に
初めて案内される世界がある。
(これは高級輸入車取り扱って初めて知った。)
つまりここで言う富裕層とは
年収や資産額の区分ではない。
時間をかけて関係を築くことを厭わず
自分の好みや価値観を言語化でき
その対話を楽しめる人であるということ。
そうした人たちのことを
広義の意味で富裕層と指しているように見える。
───
宿泊業界で起きているズレ
さて宿泊業界ではどうだろうか。
富裕層向けと言いながら
実際にやっていることは
価格を上げただけ
設備や内容を豪華に高級にしただけ
また言葉を飾っただけ
そんなケースも少なくない。
だがそれは
本当に富裕層に向けた設計なのだろうか。
一泊十万円でも
ただ高いだけの宿は存在する。
逆に価格はそこまで高くなくても
強く支持され続けている宿もある。
違いはどこにあるのか。
───
富裕層向けとは選ばせないこと
ロールスロイスの記事で印象的だったのは
選択肢を与えているようで
実は選ばせていない点だ。
すでに関係があり
すでに価値観が共有されている。
だから提案が成立する。
宿泊業界で富裕層向けを目指すなら
まず必要なのは集客ではなく
関係性の設計だと思う。
誰にどんな時間をどんな姿勢で提供するのか?
その外観が曖昧なまま
価格だけを上げても届く相手は変わらない。
───
本当に考えるべき問い
富裕層に届けたいのか。
それとも富裕層という言葉に
寄りついているだけなのか。
前者なら
商品や価格の話よりも先に
関係の築き方を見直す必要がある。
後者なら
その違和感は
いずれ現場にも返ってくる。
───
富裕層という言葉の正体
どうやら富裕層とは
お金をたくさん持っている人のことではない。
選択に疲れていない人
説明されなくても価値を感じ取れる人
そして自分の感覚を信じている人
そういう人たちこそが富裕層と言われる
人たちのような気がする。
ロールスロイスを買う人と
同じ宿に泊まる人が
必ずしも重なるわけではない。
けれど
姿勢や価値観の部分では
確かに通じるものがある。
───
宿泊業界で富裕層向けを語る前に
富裕層向けという言葉を使う前に
一度問い直してみたい。
誰とどんな関係を築きたいのか。
その問いに答えられないままでは
どれだけ立派な言葉を使っても
届く相手は変わらない。
富裕層とは狙うものではなく
結果として残る人たちのことなのかもしれない。
そう思いながら
あの記事を読み終えた。
とにかくいい車であることは間違いがない。
それが日本に流入するというすごいことだけど
そういう人も旅に出るんじゃないか?
と考えるとやはり全ての宿泊施設に関係を作れるし
作らないという選択ができるのだ。
今こそ自分たちが誰どんな約束をして
それを果たしていく関係性構築することが
大切になるのではないかと思わせてくれる記事でした。皆様も興味本意で見てみてください!

