AIはブランドを壊すのか?無効化される時代に宿が残すべきもの

最近AIや生成AIの話題が、
ようやく現場レベルの議論に降りてきたなと感じることが増えた。
先日日本経済新聞で
「AIはブランドを無効にする 星野リゾート、変革への備え」
という記事を読んだ。

とても強い言葉だと思う。
ブランドを強化するでもなく、
再定義するでもなく、
無効にするという表現。
色々引っかかりながら、
何度か読み返した。
───
記事の中で語られているのは、
AIによって情報の取得や比較が極端に容易になり、
従来のブランド力が
そのまま競争優位にならなくなるという話だ。
名前を知っている。
イメージが良い。
なんとなく安心できる。
そうした認知や印象が、
AIを介した選択の前では一度フラットに
並べられる。
ユーザーは
どこが有名かではなく、
自分にとって何が合うかをAIに問いかける。
そのとき、
ブランドというラベルだけでは、
選ばれる理由になりにくくなる。
これは宿泊業に限らない。
けれど宿泊業ほどこの影響を強く受ける業界も、
そう多くない気がしている。
───
ただここで一つ立ち止まって考えたい。
AIは本当にブランドを無効にするのだろうか?
もう少し正確に言うなら、
無効になるのは、
中身を伴わないブランドなのではないか。
名前だけが先行し、
説明されていない価値。
更新されていないストーリー。
現場と乖離したイメージ。
そうしたものが、
AIによって分かりやすくも一気に剥がされる。
逆に言えば、
これまで言語化されず、
暗黙知として積み重ねられてきたものは、
むしろ重要性を増す。
───
宿の現場で考えると、
この話はかなり具体的だ。
うちは老舗だから
有名だから
評価が高いから
それだけでは残念ながらAIは推薦しない。
代わりに見られるのは、
どういう人が、どういう時間を過ごし、
何を持ち帰っているのか。
どんな価値観で運営され、
どんなことを大切にしていて、
どんなことはしないのか。
つまり、
ブランドの外側ではなく、
内側まで見に来るのだ。
───
ここ数年、
支援の現場で感じている違和感がある。
ブランディングという言葉は、
増え続けている。
けれど、
語られている内容は、
どこか表層的だ。
ロゴ。
コピー。
世界観。
トーン。
もちろん大切だ。
ただそれだけを整えても、
AI時代には簡単に並列化される。
それらは、
説明されていない限りAIには伝わらない。
───
AIは、
空気を読まない。
雰囲気に酔わない。
行間を汲まない。
書かれていること、
構造として示されていること、
一貫して語られていることだけを拾う。
だからこそ、
ブランドは
感じさせるものから
説明できるものへと
変わっていく必要がある。
これは安っぽく言語化しろという話ではない。
むしろ逆で、
曖昧にしてきたことを、
一度きちんと見つめ直すということだ。
───
星野リゾートが
このテーマを正面から語っていること自体、
とても象徴的だと思う。
すでに強いブランドを持つ側が、
無効化を前提に語る。
それは危機感というより構造理解に近い。
ブランドは、守るものではなく、
更新し続けるもの。
そして、
語り直し続けるもの。
───
AI時代において、
宿が持つべきブランドとは何か。
それは派手な言葉でも分かりやすい
差別化でもない。
この宿はどういう考え方で存在しているのか。
誰にどんな時間を渡そうとしているのか。
その問いに自分たちの言葉で答え続けられること。
AIはその答えを拾い、
整理し必要な人のもとへ運ぶ。
だからこそ無効になるのはブランドではない。
あえていうと語られていないブランドだ。
───
AIはブランドを壊す存在ではなく、
中身を問う存在なのだと思う。
そう考えるとこの変化は脅威というより、
健全な揺り戻しに近い。
宿泊業がもう一度、
自分たちの足元を見直すための。
そんな時代に今差し掛かっている気がしている。
それを最先端で星野リゾートの星野さんが
語っていることの大いなる意味を
感じたとてもいい記事でしたので皆様も一度
読まれてみてください。

