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売上を追わない宿が、売上と向き合うとき

売上を追わない宿が、売上と向き合うとき

売上を追わないが、売上は必要というジレンマ

地方の小さな温泉宿。
家族で営む10室ほどの宿では、
お金儲けが目的じゃないという言葉もよく聞こえてくる。

実際丁寧な接客、
地元食材を使った手料理、
季節ごとのしつらえ。
どれも商売っ気を超えた「こだわりのような日常」としての美しさがある。

ただ一方で、
「とはいえ、売上が立たなければ宿は続かない」という現実もあるわけだ。
借り入れもあり理想と現実。
本音と建前。
やせ我慢が常であるのは仕方ないことだ。

家族で力を合わせてなんとか回しているが、
年間稼働率は平均して40〜48%。
1泊2食で1人あたり18,000円、同伴係数は2.3人。
計算上は悪くないように見えるけれど利益が残らない。

頑張っても売上が上がらない。
上がったところで利益は消える。
かといって安易に値上げもできない。

そんな宿が、売上と向き合うにはどうしたらいいのだろう?

売上は「追いかける数字」ではなく、
積み重なった構造の結果であるとする視点。
感覚のまま頑張るから一歩踏み出すことが必要。


まず残念ながら存在が、見つけてもらえていない

宿の魅力は、
温泉でも料理でもなく人柄かもしれない。
けれど見つけてもらわなければ始まらない。

とある宿は長年口コミと紹介に頼ってきた。
派手な宣伝はしたくない。
SNSも苦手。
OTAも最低限で写真は昔のまま。

予約が伸びないのは、魅力がないからではない。
「知られていない」から選ばれないだけという事実が横たわっていた。

▶︎実際の改善アクション
・プロカメラマンによる写真撮影(人物・風呂・料理・客室)
・トップページで「この宿が選ばれてきた・選ばれる理由」の言語化
・新着情報やSNSにて、月4回の季節投稿(文章付き)
・OTAの紹介文を自分たちの言葉に修正

「伝える」とは、広告を出すことではない。
必要な人に届く言葉を整えること。
そこの原点に立ち返ったとき問い合わせが少しずつ増えはじめた。


泊まりたいのに、予約できない

お客様が「いい宿だな」と感じた次の瞬間、
予約できるかどうか?が勝負になる。

この宿では、空室があってもネットに反映されていなかったり、
価格が不安定で予約の決断を鈍らせていた。

泊まりたいと思った瞬間に予約できなければ、
次の候補に流れてしまう。

▶︎実際の改善アクション
・自社サイトにオンライン予約システム(レスポンシブ対応)を導入
・OTA在庫の管理を一元化をしリアルタイム反映
・「売りたいプラン」を絞って強化
・価格の安定化と季節変動のルール明文化(平日/休前日/繁忙期)

届けるとは、感情を行動に変えてもらう導線を整えること。
思い立ったときに迷わず予約できる環境をつくった。

増えた予約を、支えきれない?!

売上が増えても、現場が崩れては意味がない。
とある宿では、繁忙期になるとミスやクレームが増え、
「忙しいときほど評価が下がる」悪循環が起きていた。

原因は、役割分担が曖昧なこと、
業務が属人的で誰かが抜けると成り立たないこと。

▶︎実際の改善アクション
・業務マニュアルを家族内でまず作成(掃除・配膳・電話対応など)
・忙しさに応じて入れるご近所パート制度の導入
・夕食時間の固定/選べる開始時間は2つまでに
・貸切風呂など時間制管理が複雑なサービスは簡略化

「整える」とは、予約に耐えうる体制をつくること。
忙しいときほど笑顔が増えるような仕組みが必要だった。

関係が、つながっていない

一度来てくれたお客様との関係が、翌年には途切れてしまう。
それはサービスの質の問題ではなくきっかけの不在かもしれない。

宿にとってのリピーターは「売上」ではなく、「信頼」の証。
けれどただ来訪を待つのではなく、
かっこよく言えば関係性のデザインが必要だった。

▶︎実際の改善アクション
・顧客の希望者にはメール登録を促し、季節便りを送付(月1回)
・2回目以降のご予約には「リピーター限定プラン」を用意
・Instagramで、過去のお客様が喜びそうな季節の景色を発信
・リピーターには手書きメッセージを添えたDMを年2回送付

「続けてもらう」とは忘れられない宿になるということ。
また来たくなる仕掛けはきっと大げさでなくていい。

売上とは、「構造の結果」である

とある宿が売上を伸ばせたのは、
「稼働率を上げよう」「単価を上げよう」と躍起になったからではない。

それよりも、「問題の滞りの発見」「何が機能していないのか」を
体系的な構造で見直すことに注力したことだ。

すると結果として稼働は42%から50%台に、
同時に平日と閑散期の稼働が伸び利益率も上がった。

売上は追うのではなく、整えることで立ち上がってくる。
それを描いてみて見えてきたことだった。

宿の営みをつなぐために

宿は誰かの記憶に残る場所であってほしい。
けれど、そのためには宿の営み自体が続いていかなければならない。

だからこそ、売上は宿を守る道具として、
もっと穏やかに、誠実に、構造的に捉え直してもいい。

売上を追わずに、売上と向き合うということ。
その視点が、宿を次の季節へつないでくれるのかもしれない。
だからこそ言い訳をせずにしっかりと今を見つめて
これからを描く必要があるのだ。
そこに向かうためにも今一度小さなきっかけを無駄にせずに
向き合ってほしいと思うし私達もしっかりと伴奏していきたいと思う。

佐藤弘明
佐藤弘明
常務取締役

旅館支援歴16年|集客・ブランド設計・運営改善まで現場密着伴走|旅館業界のリアルな現場から生まれる気づきや宿の未来を共につくるための視点を日々発信しています。

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