旅館の味が、守れなくなってきている。料理人不足の時代に宿の魅力をどう継承するか

旅館の魅力はなんですか?と聞かれたとき、
多くの人がまず「料理」と答える。
地のもの、
旬のもの、
器や盛り付けに込められた季節感。
それを一皿ずつ味わえることは、
旅の大きな楽しみだし、
「料理がいいからこの宿に来た」という声も
少なくない。
けれど今、
その料理をつくる人がいない。
宿の味を守るための人材がいなくなっている。
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調理師免許の取得者が、そもそも減っている
厚生労働省のデータによれば、
調理師免許の新規取得者数は
2000年をピークに減少。
2022年にはピークの半分以下にまで
落ち込んでいる。
その背景にはいくつもの要因がある。
①給与水準の低さ(全国平均:約23〜25万円)
②長時間労働と休みの取りづらさ
③職人的な文化への抵抗
④若年層のなり手不足
⑤地方を中心に進む人口減少
料理を支える人材が、
残念ながら数も質も
追いつかない時代に入っている。
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料理の宿でありながら料理が出せなくなる
旅館にとって料理は単なるサービスではない。
記憶に残る時間をつくり
宿の個性を形づくるものだ。
それなのに、
料理長が辞めた途端に味が変わり、
売上が下がるという現実も起きている。
厨房の火が止まり、
仕入れの工夫も薄れ、
地元とのつながりも断たれていく。
味が消えるということは、
大袈裟かもしれないが宿の物語が一つ消えるということでもある。
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それでも料理をあきらめないために
昔ながらのやり方でこの時代を乗り越えるのは正直難しい。
けれど料理の魅力を失わずに
残す方法はきっとある。
いま必要なのは「変える覚悟」と「守る芯」を両立すること。
たとえば、
①若手が3年で成長できる育成モデルを整える
②地域の飲食店やケータリング業者と連携し役割を分担する
③全部出す発想から伝えたい一皿に絞る発想へ
④配膳や器提供の間合いを“料理体験”として再編集する
料理の本質は味だけではない。
提供の流れや背景を含めた空気感にこそ、
旅館の価値が宿る。
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旅館の味を守ることは、
宿の文化と記憶を守ることでもある。
人がいない。
だからやめるではなく
どうすれば伝え続けられるかを考える。
味を変えずに形を変える。
進化と変化。
繋げていくこととこだわりと何かを変化させることが時代を生き抜く際に必要なのかもしれない。
