伝わるとは何か?言葉、デザイン、写真。届くということの、ほんとうの意味

みなさん伝えると意識したことがありますか?
私も日々仕事や日常でも、
「ちゃんと伝えたつもりだったんだけどな」
「言ったけど、伝わってなかったみたいで」
すれ違いを感じる瞬間がある。
でも実は、“伝える”と“伝わる”は、まったく別の話だ。
伝えるのは、自分の都合。
伝わるのは、相手の中に生まれる理解や納得、そして行動。
つまり、「伝わる」というのは、
ただ言った・書いた・見せたという事実の“その先”に、
相手の感情や行動が変化するという“結果”が生まれて初めて成立するものなのだ。
視覚が、すべてを決める時代に
観光庁の調査によれば、宿泊施設を選ぶ際に最も重視される情報の第一位は「写真」(約65%)。
「レビュー」や「料金」よりも前に、「写真」で印象が決まり、
その印象が予約や来訪を左右している。
さらにWeb領域では、サイト訪問から3秒以内に約60%の人が離脱しているというデータもある。
言葉が届く前に、人は“印象”で判断してしまっているのだ。
これはもう、「写真」や「デザイン」は、
単なる“見た目”や“装飾”ではなく、
本質を“翻訳する言語”になっているということだ。
伝える努力よりも、伝わる設計を
旅館のブランディングでもよくあることだ。
「すごく良い宿なのに、魅力が全然伝わっていない」
「料理も接客も素晴らしいのに、写真が弱くて予約が伸びない」
そうなる理由は、たいてい“伝える側の目線”が強すぎて、
“受け取る側の視点”が抜けているからだ。
たとえば─
① 「料理がおいしい」ではなく、“写真でおいしそうに見えるか”
② 「部屋がきれい」ではなく、“雰囲気が写真で伝わるか”
③ 「女将のこだわり」ではなく、“それを誰が魅力だと感じるのか”
この問いが抜けてしまうと、伝えたいことは伝わらない。
人は「理由」で選ぶのではなく、「印象」で動く
情報過多の時代において、
人は“なんとなく良さそう”と思ったものにしか、興味を持たない。
そして、その“なんとなく”を生み出しているのが、
写真であり、色であり、余白であり、声のトーンなのだ。
だから、見た目だけ整えてもダメ。
でも、中身だけを押し付けても、もっとダメ。
“伝えること”と“伝わること”のあいだには、
「翻訳者」としての写真やデザインの存在が必要なのだ。
本当に伝えたいものは、言葉だけでは伝わらない。
けれど、言葉なしでも伝わるとは限らない。
だからこそ私たちは、
言葉も、写真も、デザインも、
すべて“伝えるための道具”として正しく使いたいと思う。
伝わるとは、“届いた”と思える手応えが、相手の側にもあること。
その距離を、言葉だけに頼らずに越えていくこと。
それが今の時代の「伝わる」ということなんだと思う。

