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泊まる。だけでは足りない時代に

泊まる。だけでは足りない時代に

宿泊業界ではまたこの季節がやってくる。
繁忙期が落ち着き、
いよいよ閑散期の入口に立つ頃。

カレンダーの数字が、
少しずつ鈍くなるのを横目に
どうにかもう一段工夫を積み上げられないかと
いつも考える。

この時期になるたびに思う。
安くする以外の武器はないのか、と。

① 体験が宿泊を定義しはじめた時代

思い返せばほんの数年前まで
宿泊は「場所」の選択だった。
観光地に近いか、
温泉があるか、
食事の評価はどうか。
いわば便利さとスペックが価値基準だった。

ところが、
グランピングやサウナが浸透するにつれ
「泊まること自体に意味がある」宿が
注目されるようになった。
自然に包まれて眠る、
火を囲んで語る、
蒸気に身を預ける。

それはただの設備やオプションではなく、
宿の主役が体験になるという変化だった。

② 次に来るのは、もっと“静か”で“深い”体験

いま時代は次のフェーズに入っているように
感じている。
いわば体験の深堀とでも呼べるような空気だ。

②-① 一人の時間を満たすソロ型の宿泊
└書斎付き客室、読書滞在、レコードリスニング
└誰にも話しかけられない数時間を設計する宿

②-②共同作業を共有する、共創型の宿泊
└収穫体験や味噌づくり、DIYステイ
└旅先でつくるという能動的な関わりを持つ宿

②-③ 人との関係を見直す、再接続型の宿泊
└スマホを封じるリトリート
└三世代で過ごす「関係性を育む滞在」
└夫婦や親子の節目旅としての宿

②-④ 時間を使い切るダウンタイム型の宿泊
└予定を詰めない旅、なにもしないを肯定
└眺め、音、香り、呼吸。五感を取り戻す滞在

どれをとっても共通するのは派手さがない
ことだ。
けれど確かに「次の一歩」として
求められている気がする。
選ばれるのは派手なアクションや表現よりも、
静かな実感を社会は人は旅に求めているのではないだろうか?

③ 宿に求められるのは「問い」を持つこと

大切なのはこれが流行りそうだという表面的なトレンドではなくなぜその体験が求められているのか?を宿側が自問できるかどうかだと思う。

人はなぜ、火を囲むのか。
なぜ、なにもしないことに
価値を感じ始めたのか。
なぜ家族で旅をする意味が見直されているのか。

その問いの先にこそ、宿の次のテーマがある。
誰かが選びたくなる理由は設備ではなく思想になりつつある。

閑散期は焦らしさと静けさが共存する季節だ。
でもこういう時期だからこそ
宿そのものの「次の形」を探る
余白があるのだと思う。

泊まることが、体験に進化し
その体験が、やがて「旅の価値」になる。

その連鎖を、もう一段深く設計できる宿が
これからの主役になっていくのかもしれない。

選ばれると言うことがこれからさらに大事に
なってくる時代がやってきている。

佐藤弘明
佐藤弘明
常務取締役

旅館支援歴16年|集客・ブランド設計・運営改善まで現場密着伴走|旅館業界のリアルな現場から生まれる気づきや宿の未来を共につくるための視点を日々発信しています。

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