ADBLOG

Category常務ブログ

旅館の未来と目先10年でどうなるか?

旅館の未来と目先10年でどうなるか?


ふと世の中の状況を見ていく中で
全国の旅館はあと10年でどうなるのか?
そんなことの手触りを少し整理したいと思い
まとめることにした。

私はこの宿泊業界に足を踏み入れて、
今年で16年になります。
当時はリーマンショックの
余波が色濃く残る2009年。
旅館の現場では「週末は満室でも、平日はがらんどう」「電話予約がまだまだ主流」「料理と布団が勝負」といった空気が当たり前でした。
OTAも浸透しきっておらず、
今では考えられないがインバウンドという言葉も今ほど耳慣れたものではありませんでした。

そこから今日まで、
旅館業界は大きく姿を変えました。
しかし今また一つの転換点を迎えている。

旅館数はもうどれだけ残っているのか?

厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、
2015年時点で全国に約40,661軒の旅館が営業していました。
その後も毎年減少が続き2017年には38,622軒に。
2018年に旅館とホテルの区分が統合され、
以降は両者の合算で約5万軒前後と表示されるようになりましたが、
旅館単体の数は依然として減り続けています。

年度(各年3月末) 営業旅館数(推定)
2015年 40,661軒
2016年 39,489軒
2017年 38,622軒
2020年以降推定35,000軒前後(旅館のみ)
※2018年以降は旅館・ホテルの合算値。出典:厚生労働省「衛生行政報告例」

16年間で見えた「旅館業界の潮目」

私自身がこの業界に入ってからの約16年を振り返ると宿泊業を取り巻く環境は
明らかに変化しました。
それは旅館という形の終わりではなく、
体験価値の再定義が問われる時代の始まりだったように思います。

■ 2009〜2012年:静かな停滞期
①リーマンショック後の国内旅行控え
②電話予約や代理店経由が主流
③OTAがじわじわと普及し始める
④客室稼働率に悩む地方旅館が多数

■ 2013〜2019年:
インバウンド前線と個人旅行の時代
①訪日外国人が急増(1000万人→3000万人)
②おもてなしの価値が再注目される一方で、体験の個別化が進行
③Booking.comや民泊サイトとしてAirbnb等普及
④見た目やフォトジェニックさが差別化要因に
⑤高級宿への資本参入や再編も進行

■ 2020〜2022年:コロナという試練
①宿泊需要がほぼゼロに
②GoToトラベルや各種支援でかろうじて生き延びた旅館も多い
③「個室食」「一棟貸し」「完全貸切」など、形態転換が進む

■ 2023年〜現在:回復と分岐点
①インバウンド復活とともに宿泊業も戻りつつあるが…
②人材不足・後継者不在が慢性化
③高収益化した一部旅館と経営困難な旅館二極化
④古民家再生・グランピング・サウナ等の異業種的融合が加速

なぜ旅館数は減り続けているのか?

旅館の減少は、
単に旅行需要が減ったからではありません。
構造的な課題が根深く存在しています。
①後継者不足
→次世代が「継ぎたがらない・継げない」現実
②人材難
→サービス業全体の人手不足、地方ほど深刻
③消費者ニーズの変化
→団体から個人へ形式から自由へ
④競合の台頭
→ホテル、簡易宿所、民泊との価格競争
⑤コロナ禍
→需要蒸発と固定費負担で廃業に拍車

これらが複合的に絡み合い、
旅館の数をじわじわと削り続けています。

そしてこれからの10年、旅館はどうなるのか?

今後10年については、
今の現状や過去からの流れを汲んで考えてみると
3つのシナリオが想定されます。

①衰退シナリオ
このまま構造問題が放置されれば、
2035年には2万~3万軒を切る可能性。
旅館は「特別なときだけの高級体験」として、
ごく一部だけが生き残る未来。

②現状維持シナリオ
政府支援や一部旅館の高付加価値化により、
3万軒前後を維持。
ただし稼働率と利益率の二極化はさらに進行。

③成長シナリオ
旅館の「意味」や「使われ方」が刷新され旅館数は横ばいまたは微増。
外資や地域ファンドによる再生。
若手経営者の参入、体験型宿泊の融合などが鍵。

ポジティブな方向性に目を向けていく中で
どうすれば旅館は生き残れるのか?

旅館を守るではなく、
旅館という形をどう再定義するか?
これが、次の時代に残る旅館に必要な視点ではないかと考えている。

①ハードから入らない
→建物の立派さではなく、どう過ごすかを設計

②価格=体験価値
→単価設定に明確なストーリーと理由を持つ

③情報発信から体験共有の場
→伝わるビジュアルと伝え方が重要

④人材を仕組みで育てる
→属人化からの脱却。
教育・評価制度の整備が必要。


旅館は古くて伝統的なものではなく、
変われるかぎり、
残れる存在だと私は思っています。
私たちがいま手を打てるかどうかで、
10年後にこの国に「旅館」という文化がどのくらい残っているかが決まります。

ここ様にいくつかの用意された未来の想像は可能だ。
よくも悪くも想像したことだけが
未来では決してない。
把握することから次は実行に移り長い目線でコツコツと喜びを作り続けてこそこの業界の価値が見出せるのだと思う。

こちらの振り返りや整理がまた誰かの経営判断の参考になれば嬉しいです。

佐藤弘明
佐藤弘明
常務取締役

旅館支援歴16年|集客・ブランド設計・運営改善まで現場密着伴走|旅館業界のリアルな現場から生まれる気づきや宿の未来を共につくるための視点を日々発信しています。

ページ上部へ戻る