
仕事というのは不思議なもので、
ちゃんと作ればついつい届くような
気がしてしまう。
たとえば良いパンフレットを作る。
写真も悪くない。
言葉も整っている。
けれどそもそも手に取られなければ読まれない。
看板も同じだと思う。
見やすく整えて言いたいことも入れた。
それでも人通りのない場所に立っていれば、
気づかれないまま終わる。
採用サイトも少し似ている。
採用ページを整える。
福利厚生を書く。
社員紹介を載せる。
働く人の声を入れる。
それ自体はとても大切だと思う。
ただそれでも応募が増えないことがある。
その時に見直したいのは、
採用サイトの中身だけではない。
そもそもそこに人が来ているのか。
そこまで含めて考えないと、
採用はなかなか動きにくい。
地方の旅館やホテルの採用は、
いまそういう段階に入っているのだと思う。
いま旅館の採用市場で起きていること

旅館の採用課題
採用サイトを整えても応募が増えないことがある
宿泊業でも採用ページを
きちんと作る施設は以前に比べて格段に
増えている。
仕事内容を載せる。
福利厚生を書く。
寮の情報を入れる。
職場の雰囲気が伝わる写真も載せる。
けれどそれでも応募が増えないケースがある。
その理由は採用ページが悪いからとは限らない。
もっと手前にある。
そもそも求職者に見つかっていない。
そこが弱い場合が多い。
採用サイトは受け皿ではある。
でも入口ではない。
入口がなければどれだけ整った採用ページでも、
見られないまま終わる。
この感覚は地方の旅館やホテルでは特に大きい。
人手不足は長らく続いている。
若手人口そのものも減っている。
しかも最初から宿泊業を
第一志望にしている人ばかりではない。
つまり採用市場の中で、
ただ待っているだけでは見つけてもらいにくい。
これが今の前提だと思う。
旅館の採用課題は単純に人が足りないという
一言では片づけにくい。
人手不足が常態化している。
宿泊業全体で採用競争が強くなっている。
他業種とも比べられる。
他地域とも比べられる。
地方で働く意味そのものが問われる
時代にもなっている。
さらに大きいのは、
そもそも知られていないことだと思う。
会社名で検索する人は、
すでにその宿を知っている人だ。
でも母集団を増やすには、
まだ知らない人に
見つけてもらわなければいけない。
その前段階の認知が弱いまま、
採用ページだけを整えている施設は少なくない。
加えて仕事の不安も大きい。
未経験でも大丈夫なのか。
どんな働き方なのか。
寮はあるのか。
通勤はしやすいのか。
中抜け勤務はどうなるのか。
生活は成り立つのか。
求職者は期待より先に不安を見ていることが多い。
その不安が解消されないままでは、
応募までは進みにくい。
そして求人は埋もれやすい。
ホテルスタッフ。
旅館スタッフ。
フロントスタッフ。
清掃スタッフ。
職種名だけでは一覧画面の中で違いが見えにくい。
さらに応募前の接点も不足しやすい。
見学できるのか。
説明会はあるのか。
話だけ聞けるのか。
オンラインで相談できるのか。
こうした入口がないと
応募の手前で止まってしまう。
つまり応募が少ないのは
採用ページだけの問題ではないということだ。
採用市場の中で知られていないこと、
不安が減っていないこと、
応募前の接点が少ないことが、
少しずつ重なっているのだと思う。
問題は採用サイトではなく母集団形成にある
ここで大事なのは、
採用サイトを否定することではない。
採用ページは必要だ。
受け皿としてきちんと整っていなければいけない。
ただその前に考えたいことがある。
いま自分たちの宿にはどんな入口があるのか。
どこで見つけてもらっているのか。
どこで止まっているのか。
求人媒体なのか。
Google検索なのか。
SNSなのか。
動画なのか。
会社説明会なのか。
見学や相談なのか。
採用は応募フォームから始まるわけではない。
そのずっと手前から始まっている。
見つけてもらう。
少し気になる。
働けそうだと思う。
不安が減る。
見学してみる。
話を聞いてみる。
そこでようやく応募につながる。
この流れを持たないまま、
採用ページだけを磨いても応募は増えにくい。
宿泊業の採用導線

会社はどのように発見されているのか?
宿泊業の採用は入口の設計から始まる
採用導線を考える時、
最初に必要なのは見つけてもらうところから
設計することだ。
求人媒体で見つけてもらう。
検索で拾ってもらう。
SNSで雰囲気を知ってもらう。
動画で働く実感を持ってもらう。
そこから興味に変わる。
見出しやタイトルが刺さる。
写真で雰囲気が伝わる。
なぜここで働くのかが少し見える。
そのうえで不安を減らす。
未経験でもよいのか。
寮はあるのか。
通勤はどうか。
教育はあるのか。
こうしたことが見えると距離が少し縮まる。
さらに応募前接点をつくる。
見学。
説明会。
相談。
オンライン面談。
ここがあるだけで
心理的なハードルはかなり下がる。
採用ページはその最後に置かれる受け皿だ。
入口づくりが先にある。
この順番を逆にしないことが大事なのだと思う。
宿泊業の採用でまずやること5つ
採用の話になると、
ついデザインや原稿の表現から入りたくなる。
もちろんそれも大事だ。
けれど母集団形成を考えるなら、
先に整理したいことがある。
まずやることは次の5つくらいだと思う。
① 入口を洗い出す
いま自社が持っている入口を全部書き出す。
求人媒体、Indeed、Google検索、自社採用ページ、Instagram、説明会、見学、紹介。
まずは接点の全体像を見えるようにする。
② 対象別に入口を分ける
正社員、パート、県外応募者、未経験者では、
見ている不安が違う。
ひとつの求人で全員を採ろうとせず、
入口を分けて考える。
③ 見出しを変える
ホテルスタッフ募集、
旅館スタッフ募集だけでは埋もれやすい。
未経験歓迎。
社員寮あり。
応募前見学歓迎。
中抜け勤務なし。
午前中のみ勤務可。
応募理由が見える見出しに変える。
④ 応募前接点をつくる
見学、相談、説明会、オンライン面談を置く。
いきなり応募ではなく、
まず話を聞ける入口を用意する。
⑤ SNSで認知をつくる
すぐ応募を取るためではなく、
働く実感や雰囲気を伝えるために使う。
職場の空気。
先輩の働き方。
寮の暮らし。
一日の流れ。
そうした情報が応募前の安心につながる。

もう一度見直してみる大切なポイント
ひとつの求人で全員を採ろうとしない
もうひとつ大事なのは入口を分けることだ。
正社員向けとパート向けでは、
見ているものが違う。
県外応募者と地元応募者でも違う。
未経験者と経験者でも違う。
正社員なら、成長、休日、社員寮。
パートなら、時間、通いやすさ、両立。
県外応募者なら
移住不安、暮らし、オンライン説明。
未経験者なら、教育、見学歓迎、先輩の声。
経験者なら、役割、待遇、裁量。
入口を分けると、言葉も変わる。
検索される言葉も増える。
結果として母集団形成の幅も広がる。
ひとつの求人で全員を採ろうとすると、
誰にも刺さらないことがある。
だからこそ分けること自体が
採用の入口設計になる。
職種別・対象別に入口を分ける

それぞれに届けたい人に向けて発信を変える
求人原稿の冒頭は、
会社説明より不安解消から入る
求人原稿も少し見直したい。
多くの原稿は会社概要や仕事内容から始まる。
でも求職者が最初に知りたいのは、
自分でも働けるかどうかだったりする。
未経験でも応募できるのか。
応募前に見学できるのか。
寮や通勤の不安はどうなるのか。
どんな人が働いているのか。
生活と両立できるのか。
つまり最初にあるのは期待より不安だ。
だから冒頭では、
会社説明より先に、
その不安に触れたほうがいい。
会社の説明はそのあとでも遅くない。
まずは自分でも大丈夫かもしれないと
思ってもらえること。
そこが入口になる。
SNSや動画は応募獲得より認知形成に使う
SNSや動画も採用では意味がある。
ただし役割を間違えないほうがいい。
すぐ応募を取るために使うと苦しくなる。
でも会社を知ってもらう。
働く人を知ってもらう。
職場の空気を感じてもらう。
そういう認知形成にはかなり向いている。
入社1年目の一日。
フロントスタッフの朝。
ハウスキーパーの仕事。
社員寮の暮らし。
見学会の様子。
先輩が新人に教える場面。
こうしたものは派手ではなくても効く。
この職場なら働けそうだ。
その感覚を少しずつ育てるからだ。
宿泊業の採用は待つ採用から見つけてもらう採用へ
宿泊業の採用改善というと、
採用サイトのリニューアルの話になりやすい。
もちろんそれも必要だ。
けれど本当に先に考えるべきなのは、
その採用ページに誰をどう連れてくるのかという話なのだと思う。
採用サイトは受け皿だ。
受け皿は必要だ。
ただその前に入口がいる。
接点がいる。
不安を減らす流れがいる。
待っているだけでは採用は動きにくい。
見つけてもらう。
少し気になってもらう。
話を聞いてもらう。
そのうえで応募につなげる。
繰り返しになるが宿泊業の採用は待つ採用から見つけてもらう採用へ切り替わっている。
それに思考が置き換わって
採用サイトもはじめて活きてくるのだと思う。
