COLUMN

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SCROLL

2026.05.08

誰に何を売っているのか。宿泊業の骨格が曖昧になるとき

高いものを見ると、
人はつい値段の理由を考えたくなるもので。

なぜそんなに高いのか。
何が違うのか。
それだけの価値が本当にあるのか。

けれど実際には高いものほど
理由はひとつではないことが多い。
素材だけでもない。
機能だけでもない。
歴史だけでもない。
そこにいる人の気配や場に流れている空気や
受け取る側の期待まで含めて
値段が成り立っていることがある。

昨日勉強会の一環でパークハイアット東京を
ご案内いただく機会があった。

その時間の中で私はずっとサービスと価格について考えていた。
けれど途中から
それは単なる価格の話ではないと思い始めた。

これは何に対して高いのか。
そしてもっと言えば、
この場所はいったい誰に向けて、
何を届けているのか。

そんな問いが頭の中に残った。

パークハイアット東京で感じたのは
価格よりも骨格だった

今回伺って印象に残ったのは、
改装というよりお直しに近いという話だった。

大きく壊して新しくするのではなく、
当時の思想を汲みながら整えていく。
その姿勢にまず強い意思を感じた。

新しくすること自体が目的ではない。
このホテルが持っていた空気や記憶や位置づけを、いまの時代に合わせて整え直す。
その考え方は単に建物の話ではなく、
ブランドそのものの扱い方のようにも思えた。

価格については詳しく聞き切れなかったものの、
以前の水準から考えると
昨今の事情を踏まえれば
大きく上がっているのではないかという
印象があった。
スタンダード客室でも
10万円を超えるという話だった。
※写真はスイートルームだ

その数字だけ見ればやはり高い。
けれど実際にその場に立つと、
単価の高さだけが前に出てくる感じではなかった。

むしろ場の空気がはっきりしている。
何を守り、何を変えず、
どういう人に向けて存在しているのかが、
空間の中にサービスにじんでいた。

GW明けでも人がいる場所は何を届けているのか

GW明けにもかかわらず
ランチ利用には人が大勢いた。
待ち望んでいた方が多かったのだろうと思う。
ブランドの強さもある。
けれどそれだけでこの人の集まり方は
説明しきれない気もした。


海外と国内は半々くらいの印象だった。
ただ宿泊者の雰囲気を見ると、
おそらくかなり海外比率は高いのでは
ないかと感じた。
働いている方々も国内外を問わず多く、
みな一様にはつらつとしていて、
誇りを持って働いているように見えた。

この時にあらためて思ったのは、
宿泊業の商品は部屋だけではないということだ。

もちろん客室は重要だ。
料理も重要だ。
眺望も立地も設備も大切だと思う。

けれどそこにいる人の姿勢もまた、
価値の一部になっている。
空間に漂う緊張感も、
過ごす時間の質もその場所に
足を運ぶ理由になっている。

つまり高いホテルは、
広い部屋や豪華な設備だけで
成り立っているわけではない。
安心感や整った空気や、
期待を裏切らない時間まで含めて、
価値が立ち上がっているのだと思う。

価格とサービスは比例するのか

では価格とサービスは比例するのだろうか。
ここは簡単なようで難しい。
高いからサービスが良い。
そう単純に言い切るのも違う気がする。
実際には丁寧な接客や細やかな気づきは、
価格帯にかかわらず良い宿にはある。

ただ一方で高価格帯のホテルには、
高価格であることを支えるだけの
整え方が必要になる。

人の配置から空間の密度や説明の仕方まで、
会社のマニュアルなのかその人なのか声のかけ方から清掃の基準など目に見えない手間と配慮が詰まっていることは言うまでもない。
そのどれもが崩れていないことこれが守りたかった価値ブランドなのだろう。

高い価格というのは、
特別な演出がひとつあるということではなく、
崩れの少なさに対して払われている面も大きいのではないかと思う。

お客様は何に満足したのかを
細かく言葉にしないことがある。
でも不満がある時はすぐにわかる。
ほんの少しの違和感や不足。

高価格帯ほどその少しが許されにくい。
だからこそ価格とは贅沢の値段である前に、
違和感を減らし続けるための
コストでもあるのだと思う。

顧客体験とは
何が積み上がったものなのか

今回いちばん考えさせられたのは、
何が顧客体験になるのかということだった。

料理だろうか。
部屋だろうか。
眺望だろうか。
スタッフとの会話だろうか。
それともホテルに着く前から始まっている
期待そのものだろうか。

たぶん答えはどれかひとつではない。

ホテルや旅館の体験は、
分けて考えると見えにくくなる。
予約した時、到着した時、フロントでの第一印象
部屋に入った瞬間、食事の時間
眠る前の心地良さがある。
帰る時の余韻がある。

それらが少しずつ積み上がって、
最後にあの宿はよかったという感覚になる。

顧客体験とはやはり派手な一撃ではなく、
記憶に残る流れのことなのかもしれない。

旅館とホテルは何が違うのか

そのうえで自分たちの舞台に引き寄せた時に、
旅館とホテルは何が違うのだろうと思った。

この問いも簡単には言い切れない。
けれど少なくとも違いはある。

ホテルは快適性の精度を上げていく力が強い。
滞在の流れを滑らかにし安心して過ごせる時間を
整えるのがとてもうまい。
空間もサービスもひとつの都市的な体験として
編集されていることが多い。

一方で旅館は人を介したサービスや、
その土地ならではの過ごし方を濃く感じやすい。
料理、温泉、間合い、会話、お迎え、送り出し方。
そうしたものが
もっと身体感覚に近いところで記憶に残る。

ただここで難しいのは、
旅館の魅力として語られてきたものが、
海外のお客様には制約や不便さとして受け取られることもあるという点だ。

布団を敷く。
時間が決まっている。
館内のルールが多い。
自由度が少ない。

そうしたことが初回は異文化体験として
面白くても二回目以降の予約には
つながっていないのではないか。
そんな見解ももらってもたしかに考えさせられた。

旅館側が良さだと思っていることと、
お客様が快適だと感じることが、
少しずつずれている場面はあるのかもしれない。

宿泊業は誰に何を届けているのか

ここまで考えてくると、
いちばん大きな問いに戻ってくる。

宿泊業は誰に何を届けているのか。

宿泊業の価値は、
部屋や料理のように
ひとつの要素だけで説明できるものではない。
いくつもの要素が重なって、
ようやくその宿らしさが浮き上がる。

けれどいろいろなものが重なっているからこそ、
逆に輪郭が曖昧になりやすい。
誰に向けた価値なのか。
何をいちばんの軸として選ばれたいのか。
そこがぼやけると、
宿は何でもあるようで
何を大事にしているのかが見えにくくなる。

高価格帯ホテルを見て強いと感じるのは、
そこが比較的はっきりしていることだと思う。
誰に向けているのか。
何を守っているのか。
何に対して価格がついているのか。
その輪郭が空間にも人にも出ている。

旅館や地域の宿がこれから
考えなければいけないのもたぶんそこだ。

不便さを文化として残すのか。
快適性を優先して整えるのか。
人を介した濃いやりとりを価値とするのか。
自由度の高さを価値とするのか。

全部を取りにいくのではなく、
自分たちは誰に向けて
どんな時間を整えている宿なのかを、
もう一度定め直す必要があるのだと思う。

骨格がある宿は価格の説明がいらなくなる

価格の話から始まったのに、
結局ここへ戻ってくる。

高い安いの前に骨格があるかどうか。
誰に向けていて、
どんな価値を宿しているのかが
見えているかどうか。

そこがはっきりしている宿は
価格の説明を細かくしなくても、
お客様の中で納得が生まれやすい。
逆にそこが曖昧な宿は、
価格だけが前に出てしまう。

宿泊業の価値は数字だけでは測りきれない。
けれど測りきれないからといって、
曖昧なままでいいわけでもない。

何を価値として残すのか。
誰に届けたいのか。
そのためにどこまで整えるのか。

パークハイアット東京を見ながら考えていたのは、たぶんそういうことだった。

高価格帯ホテルの話を、
自分たちには遠い世界だと片づけるのは簡単だ。
けれど本当に見るべきなのは価格の高さではなく、その価格を支える骨格の強さなのだと思う。

宿泊業の骨格が曖昧になるとき、
価格も、サービスも、体験も、
全部が少しずつぼやけていく。

だからこそ今旅館でもホテルでも、
自分たちは誰に向けて、
どんな時間を整えているのかを、
もう一度考え直す時期に来ているのかもしれない。

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